講座 臨床実習指導の創意工夫・1
理学療法のエキスパートを育てる―臨床実習をめぐる私の工夫
リハビリテーション専門病院における臨床実習指導の工夫/介護老人保健施設における総合臨床実習
澤田 明彦
1
,
有馬 一伸
1
,
金谷 さとみ
2
Sawada Akihiko
1
,
Kaneya Satomi
2
1七沢リハビリテーション病院脳血管センター理学療法科
2介護老人保健施設パステルヴィレッジ小野
pp.53-61
発行日 2002年1月15日
Published Date 2002/1/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1551105969
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1.はじめに
5,000時間は毎日8時間,1週5日,1年50週として2年半に相当する.この時間は,Norman1)の概算した,ヒトがある事柄に熟達し,エキスパートやプロフェッショナルになるために必要とする標準最低時間である.ある事柄とは,例えば卓球,野球,手品,コンピュータプログラミング,チェス等を指している.おそらく,理学療法の場合においても,これは例外ではないであろう.「5,000」時間という根拠はないものの,理学療法のエキスパートになるにはこれと同等か,あるいはそれ以上の時間を必要としても何ら不思議ではない.
理学療法学生(以下,学生)は,総合臨床実習までにすでに2~3年間「理学療法」を学んでいる.しかし,その期間はあくまで「実践としての理学療法を学ぶための基礎学習」の期間であり,それをもって5,000時間が経過していると考えるには無理がある.総合臨床実習以前の学習は,5,000時間のごく一部と考えておくのが妥当であろう.したがって,総合臨床実習の期間にある学生は,理学療法の「初学者(初心者)」であると考えることができる.本稿では臨床実習を,初学者である学生が理学療法の熟達者として成長していくための第1歩と考え,論を進める.
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