報告
機能的電気刺激を用いた完全四肢麻痺患者のトランスファーについて
大西 秀明
1
,
大山 峰生
1
,
伊橋 光二
1
,
八木 了
1
,
半田 康延
1
,
吉田 忠義
2
Onishi Hideaki
1
1東北大学大学院医学系研究科運動機能再建学分野
2北陵クリニック
pp.439-443
発行日 1999年6月15日
Published Date 1999/6/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1551105335
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はじめに
脊髄損傷や脳血管障害などの上位運動ニューロン障害では,下位運動ニューロンを含む末梢神経に電気刺激を与えると,それに支配されている麻痺筋は収縮する.この原理を応用して,適切な電気刺激を行うことにより関節運動を引き起し,失われた機能を再建しようとするものが機能的電気刺激(functional electrical stimulation;FES)である1-3),FESによる動作機能の再建については数多くの報告があり,そのほとんどが対麻痺を対象とした起立・歩行動作の再建や四肢麻痺を対象とした上肢機能の再建である4-8).これらの報告はすべて,患者自身のADLを直接的に改善することを目的としており,介助者の負担の軽減を目的としたFESについての報告はみない.
第5頸髄損傷完全四肢麻痺患者のトランスファーには全介助が必要であり,患者の家族または介護者にとっては深刻な悩みの1つである.特にトランスファーを主に行う者が女性や高齢者であれば,その問題はいっそう重大となり,家族の身体的・精神的負担となり,患者自身の精神的な負担の原因にもなる.そこで,患者自身のADLを直接的に拡大するのではなく,介護者の負担を軽減する目的で,FESを用いて頸髄5,6損傷完全四肢麻痺患者のトランスファーを試みたので報告する.
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