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1初めに
われわれ理学療法士が脳性麻痺児の治療を行なう場合,移動手段や呼吸,食事,排泄といった生命維持機能の問題にアプローチするとともに,社会的,人間的生活を営む上で衣服着脱を含む整容動作は生活指導の項目として重要な位置を占めることをまず認識しなくてはならない.
歩いてほしい,坐ってほしいという運動機能面での親の願いとともに,少しでも身の回りのことを自分でしてほしいという親の願いに,われわれは理学療法という手段を用いて応じていかなければならない.
しかし現実には衣服着脱という動作は,正常児でも5歳くらいにならないとすべて自立しないほど非常に多様でかつ高度な運動機能を要求される.脳性麻痺児は制限された異常な運動機能でしか動作を遂行できないのが特徴であり,整容動作,特に衣服着脱の自立には相当な困難が予想される.
正常児の場合,衣服着脱動作自立は子ども自身の社会性自立の主張によって年齢相応の成長を遂げる.子どもの社会性発達とともに複雑な着脱動作の基本的能力は自律的に学習されていく.しかし脳性麻痺児は自律的学習が期待できず,社会性自立には必ず大人の援助を必要としている.
個別の理学療法プログラムに社会性自立の援助の視点が必要であることは言うまでもない.そし
てその一環として衣服着脱動作への援助があり,両親指導が関連付けられなければならない.Finny RNは脳性麻痺児の家庭療育の中で「両親と療法士がひとつのチームとして協力しあって,初めて子供の能力を伸ばす最良の機会が与えられる」「家庭でのとり扱い方が子供の発達を助けたり,逆に障害となる」と述べている.子どもに接する機会のいちばん多い親に対していかに家庭での取り扱い方の指導を行なうかが,療法士にとって治療を成功させる重要な鍵になる.
この論文では脳性麻痺児の生活指導の中で整容動作,特に衣服着脱にポイントを置き①衣服着脱に要求される運勤機能,②正常発達からみた衣服着脱,③脳性麻痺児の問題点とタイプ別に具体的対処の方法,④両親指導,について述べてみたい.
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