一頁講座 特殊教育・6
脳性麻痺児と進路指導
澁谷 隆朗
1
1宮城県立船岡養護学校
キーワード:
脳性麻痺児
,
進路指導
Keyword:
脳性麻痺児
,
進路指導
pp.467
発行日 1977年6月10日
Published Date 1977/6/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1552103805
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進路指導は「生徒みずから自己の進路について考え,さらに社会において自己の果たすべき役割を自覚し,個性に応じて将来の進路を選択し,能力・適性を十分生かして進歩向上していくことのできる能力を養うために,教師が指導・援助することである」とされている.その内容としては,①自己理解の深化,②進路情報の提供,③進路計画,④啓発的経験,⑤進路相談,⑥斡旋活動,⑦卒業生への追指導などがあげられる.このようなごく一般的におこなわれている進路指導は生徒が将来,社会において自己の能力を十分に発揮できるという前提があって,転職,離職等の無益な損失をしないよう予め十分な指導や援助をおこなうというねらいがあると思われる.
ところで肢体不自由養護学校に就学しているなかで重度脳性麻痺児の場合,そのような進路指導をそのままあてはめることには無理があると思われる.その理由としては障害によるハンディが非常に大きいため,「社会における自己の能力を十分に発揮できる」という前提以前の「社会のなかで生かしていけるどのような能力・適性をもっているか」をみきわめることがむずかしいことや,「社会のなかで生かせる能力をどのように開発していくか」「もっている能力・適性を生かす場をどのように社会のなかに築きあげていくか」ということなどが進路指導の中心課題になるからである.したがって重度脳性麻痺児にとって,進路指導とは日常生活動作の自立にはじまり,生きがいをもつための趣味や仕事,さらに社会適応能力を身につけていこうとする教育全領域にかかわるいわば人生指導であると考えてよいと思われる.
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