講座 難病・3
パーキンソン病
久野 貞子
1,2
Kuno Sadako
1,2
1国立療養所宇多野病院臨床研究部・神経内科
2京都大学医療技術短期大学部理学・作業療法学科
pp.203-208
発行日 1998年3月15日
Published Date 1998/3/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1551105036
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はじめに
パーキンソン病は1817年に英国の医師James Parkinson1)によって初めて報告された疾患であるが,今日では脳血管障害,アルツハイマー老年痴呆とともに高齢者の三大神経疾患の1つとなっている.病理学的には,中脳黒質緻密質のメラニン含有神経細胞の変性と,残存神経細胞にLewy小体と呼ばれる細胞内封入体の出現が特徴である.この神経細胞は神経伝達物質ドーパミンを産生し,大脳基底核の線条体(被殻,尾状核)に投射しているため,患者線条体ではドーパミン欠乏が生じ運動機能障害をきたす.
本症の特徴は,緩徐に発症し数か月~数年の単位で巡行する歩行,起居,会話などの基本動作に障害をきたすが,錐体路障害と異なり筋麻痺がないことである.この運動機能障害は,安静時振戦,仮面様顔貌,前傾姿勢,小股歩行など図1に示すような特有の症状であることから,パーキンソニズムと呼ばれている.有病率は人口の高齢化と薬物治療の進歩によって高まっており,治療や介護に携わる機会も増加しつつある.
本稿ではパーキンソン病の疫学,原因,臨床像(症候,病態生理を含む),臨床症候に対する薬物療法の動向,運動療法の位置づけ(特に薬物療法との兼ね合い,運動療法に期待される効果など)などについて記述する.
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