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1.はじめに
わが国で理学療法士養成のための教育が開始されすでに30余年の歳月が流れた.この間,教育カリキュラムは複数回にわたって改正され,さらに近年度中にも大綱化を前提とした大幅な改正が予定されている.この大綱化とは,設置基準に各養成施設の創意・工夫を生かし,個別化,高等化,活性化を図ることを目的にしたものであり,看護の分野ではすでに大綱化され(平成8年8月26日通知),平成9年4月より新カリキュラムが実施される予定である.このような環境の中にあって,理学療法士養成のための教育は今後どのような方向に進もうとしているのか,また進むべきかについて展望してみたい.
教育制度全般あるいは教育の現状など基本的部分については,日本理学療法士協会より出版されている理学療法白書1995年度版を参考にしていただくことにして,ここでは省略させていただく.
理学療法教育の大きな流れの変化は1963年に各種学校として始まったものが,専修学校制度(1976年)による専門学校,さらに文部省による短期大学(1979年),そして1992年には4年制の学部教育が開始されるという制度的変革にあった.一瞥すると比較的短期間に教育制度が大きく進歩したようにみえるが,現実的には医療の高度化と人口の高齢化など社会情勢の変化による理学療法に対するニーズの高まりといった現実的側面に追い立てられて変わらざるをえなかったといったほうが正確であろう.特に高齢者保健福祉推進計画(新ゴールドプラン)や地方自治体における機能訓練事業の推進などによって理学療法士の需要数が具体化されるなどのこともあって,理学療法士の量的不足が指摘され,養成校がこれでもかこれでもかといった具合に新設されていった.
養成校の新設に当たっては教官を確保しなければならないが,大学,短期大学,理学療法士養成施設のそれぞれの設置基準(表1)にあるように教官の資格その他が厳密に規定され,これまでの専門学校や短期大学では十分にその供給ができない.したがって4年制の学部教育さらには大学院課程での教育をやろうというのが現実であろう.もちろん,教育や研究レベルの充実などといった純粋な取り組みや努力によって得られた成果の部分について否定するわけではないが,本稿では現実的な問題を解決するためにとられる教育の内容や制度の変更では決して理学療法の本質的な教育の向上につながらない,何を基本に据えて教育しなければならないかといった点から問題提起をし,今後の教育について検討したい.
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