特集 難病と理学療法
〈エディトリアル〉難病患者と理学療法
内山 靖
1
Uchiyama Yasushi
1
1北里研究所メディカルセンター病院リハビリテーションセンター
pp.785-786
発行日 1997年11月15日
Published Date 1997/11/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1551104876
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1.はじめに
難病とは,昭和47年に策定された「難病対策要綱」に基づく厚生省特定疾患を示す,いわば行政用語が広く医学領域でも用いられるようになったもので,平成9年1月現在までに38の疾患が特定疾患治療研究対象として指定されている.
「難病患者の理学療法」を概観するには,難病に対する理学療法と,難病患者と理学療法士とのかかわりに関する視点を含めることが重要である.前者では,疾病の特性や各症状に対する理学療法評価-治療が綿密な知識・技術を背景として具体的に展開されなければならない.一方後者の要素では,個々の患者さんに対する継続的な理学療法がチームアプローチのなかで円滑に行われ,かかわりを通じて生じる患者-治療者関係のすべてが含まれる.理学療法が前者に傾き過ぎればごく一部の症状に対する治療者自身の自己満足で終わる可能性が大きく,後者を前面に押し出しすぎると慢性・進行性の経過を辿るなかでそれが消極的な考え方に置き換わってしまう危険があるばかりか,理学療法士の関与が不毛に帰することになりかねない.
また理学療法士には,日進月歩の分子生物学的アプローチに基づく遺伝子診断・治療の最新知見や新たな薬物療法にも関心を示している必要があり,一方では医療・福祉制度の幅広い理解と活用を踏まえたうえで,後遺症や固定症状ではない慢性の経過をたどるなかでもめまぐるしく変化する,あるいは変化する可能性のある症状・障害に対して理学療法固有の知識・技術を応用・実践することが求められる.
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