講座 疲労・3
身体疲労と運動耐容能
田辺 一彦
1
Tanabe Kazuhiko
1
1聖マリアンナ医科大学第2内科
pp.815-820
発行日 1996年11月15日
Published Date 1996/11/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1551104649
- 有料閲覧
- 文献概要
- 1ページ目
はじめに
近年,わが国において慢性疲労時に生じる突然死“いわゆる過労死”が医学的,社会的に大きな問題となっている.突然死の原因として,心筋梗塞,狭心症などの虚血性心疾患や不整脈などの循環器疾患と脳梗塞,脳出血などの脳血管障害などでその大半を占めると考えられている.過労によると考えられる心臓突然死の発症機序としては,過労や精神的ストレスが誘因となり,虚血性心疾患を発症させ,それを基盤にして,さらに過労や睡眠不足などが加わることによって自律神経トーヌスの変化が生じ,それにより致死性不整脈や強い心筋の虚血反応発生などが考えられているが,詳細は未だ不明である.
本稿のテーマは“身体疲労と運動耐容能”であるが,初めに著者らが身体疲労と運動耐容能の関係についての研究を始める背景となった「疲労と循環器疾患の関係などに関する疫学的データ」について述べ,次に著者らが行った睡眠不足状態時の循環動態やストレスホルモンに及ぼす影響についても概説する.
Copyright © 1996, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.