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Ⅰ.はじめに
わが国の医療を取り巻く状況は,従来にも増して大きな曲がり角に来ている.医療保険制度を始め多くの既存の制度の見直しが求められてきている基本的な原因は言うまでもなく高齢社会の到来である.また,一方で高度経済成長後の課題として位置づけられる問題として,医療の質の向上,あるいはアメニティの向上に対する国民の要求が高まってきており,このことに対してもどう対処すべきかといったことも大きな要因ではないかと筆者は推測している.
さて,平成8年度診療報酬改定が先般行われた.経過を簡単に説明すると,中医協基本問題小委員会の意見書が平成7年11月に,また,中医協としての建議が同年12月に提出された.基本問題小委員会はこの間1年以上にわたり医薬品問題について協議・検討してきている.これは,わが国の医療費の30%を医薬品が占めているという実態をどう分析し,どうしたら改善できるかに焦点を当てて検討してきたので,したがって中医協建議も医薬品費の問題が中心となった.詳細は省くが,この建議に基づき薬価の改定幅が決定され,また併せて診療報酬の合理化等により診療報酬の改定幅が昨年の暮れ,大蔵大臣との事前折衝において決定された.
その後,平成8年2月14日に今回改定案が中医協に諮問され,同月16日に諮問案どおりに答申を受けたところである.
ところで,診療報酬改定はいくつかの視点によってその基本的考え方を整理できると考えている.まず1つは,医療費を不合理に押し上げる要因を除去ないし軽減する視点である.具体的には,前述した医薬品費の価格設定以外に多剤投与を含む不適切な使用の是正や特定保険医療費材料の価格設定等診療報酬の合理化がそうである.2つ目は,国としての政策課題への対応である.これには,介護保険法創設に伴う療養型病床群や痴呆疾患療養病棟,周産期医療システムへの支援措置などがそうである.第3点は,新しい技術に対する評価である.これには,高度先進医療の保険導入や運動療法の導入,リハビリテーションであれば早期リハなどがある.
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