入門講座 苦労する科目の教育実践・5
地域理学療法 教育理念の明確化が前提/地域リハ教育でリハ・マインドを育てたい
伊藤 日出男
1
,
米田 睦男
2
Ito Hideo
1
,
Yoneda Mutsuo
2
1弘前大学医療技術短期大学部理学療法学科
2宮崎リハビリテーション学院理学療法学科
pp.345-355
発行日 1996年5月15日
Published Date 1996/5/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1551104547
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Ⅰ.はじめに
理学療法士養成校において地域リハビリテーション(以下,地域リハ)あるいは地域理学療法に関するカリキュラムを検討する際には,授業の組み方や内容も重要だが,何よりも,どのような理学療法士を育成したいのか,という教育理念を明確にしておくことが重要であろう.医療機関において即戦力となるような理学療法士を育成するのか,それともグローバルな物の見方ができて,将来どの分野にも適応して伸びてゆけるような理学療法士を育てるのか,といった養成校独自の教育理念があると思われる.そして,各教師がそのような独自の教育理念をふまえた共通の理解をもって教育に当たることが,良い教育の前提となるように思われる.
大多数の養成校がそうであるように,3年間という限られた養成期間のなかで十分な内容を盛り込むことは困難であり,どこまで卒前教育において行い,どこからは卒後教育に委ねるかという区分をある程度明確にすることが必要である.地域リハの授業においても,地域保健・福祉領域の数多くの問題を取り上げて学生に講義しようとしても,大きな効果は期待できないだろう.筆者の経験から,学生にはむしろ地域で活躍する理学療法士や保健婦の実際の業務を見せ,対象となる人々とじかに接触させるほうが有効である.こうした経験は,地域リハに対する学生の動機づけを促し,物事を考える枠組みを広げるきっかけとなるものと思われる.
本論においては,教育の実践について述べるのが目的であるので,弘前大学医療技術短期大学部において筆者自身が経験してきた地域リハの授業を振り返って,いくつかの問題について意見を述べてみたい.
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