特集 「母性」「小児」「老年」の概念を変える 家族のダイバーシティ
「家族って何?」から見直そう─“わからない”という前提での教育を
沼崎 一郎
1
1東北大学大学院文学研究科
pp.976-981
発行日 2018年11月25日
Published Date 2018/11/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1663201120
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あなたにとって家族とは?
あなたの家族全員を,1枚の写真のように,頭のなかに思い浮かべてみてください。そこには誰がいますか?お父さんですか,お母さんですか? 兄弟姉妹ですか?子どもですか,孫ですか? いとこはどうですか? おじいさんやおばあさんはいますか? ひいおじいさんやひいおばあさんはどうでしょう? みんな人間ですか? ペットの犬や猫もいますか? 全員,同じ家に住んでいますか? それとも,何か所かに分かれて住んでいますか? みんな,まだ生きていますか? 死亡した人は,家族に含まれなくなりますか? あなたが思い描いた家族の間には,どのようなつながりがありますか? 血のつながりですか? 血のつながりって何でしょうか? それとも,性的なつながりですか? 性的なつながりって何でしょうか? 結婚ですか? 結婚っていったい何ですか? それは長く続くものでしょうか,それとも短く終わるものでしょうか?
世界中のたくさんの民族を訪れて,こういう質問を繰り返し,家族のさまざまな形を研究してきたのが,私の専門とする文化人類学です。しかし,結論から言うと,「これが家族だ」という答えを文化人類学は出せずにいます。それは,文化が違うと,家族のあり方が大きく違うからです。そこで,まずは世界に見られる家族の形を,いくつかご紹介しましょう。それは,あなたの考える家族と同じでしょうか,違うでしょうか?
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