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Ⅰ.はじめに
在宅要介護老人の訪問指導を実践してきた筆者の実感としては,人間が直面した苦痛にどこまで耐え,かつ,その苦悩を緩和し,問題を解決するためにどのように知恵をはたらかせることができるものか,をそれぞれが実験しているようにさえみえる.
考えてみると,そもそも障害者のリハビリテーション(以下「リハ」と略)とは,今まで不可能とされていたことへの挑戦であり,知恵を振り絞って可能性を拡大し,それを実証することであろう.
在宅障害者のリハは病院・福祉施設からの退院・退所の受け皿機能であり,したがって,入院・入所時のリハケアが大変よくみえる場でもある.入院・入所時の理学療法が,教科書どおりの理学療法技術の提供で終わらずに,どこまでその人の在宅生活を想定したケアや指導がなされてきたのかが在宅障害者のリハ目標達成の鍵を握っているといっても過言ではなく,その中核は廃用症候群の予防にある.
在宅障害者のリハ援助目標は,QOL(生活の質)向上を目指す基盤となる日常の実生活の定着化にあり,以前とは異なる障害をもった新しい生活スキルをいかに実生活に般化し,それが家族・介護者との生活とも融合し,しかもそれが継続可能な状態になることにある.すなわち,“QOL向上のための生活指導”が実施されるが,その生活指導内容には機能維持のための“廃用症候群の予防”対策が組み入れられていなければならない.
理学療法士(以下PTと略)はその専門性を駆使し,残存機能を十分に生かし,かつ,可能な限り自立度が高い,しかも,安楽に安全にできる‘生活メニュー’を提示することによって,本人・家族が決定できるような情報を与えることになる.
在宅障害者に重要とされている,いわゆる維持的リハとは,廃用症候群の予防を,生活者としての人間の基本的欲求に根ざした形で生活を組み立てていく作業でもある.
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