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講座 航空宇宙医学における廃用症候群
2.骨の廃用症候群
Disused Osteoporosis with Space Flight.
重松 隆
1
Takashi Shigematsu
1
1東京慈恵会医科大学内科学第2
1Department of Internal Medicine, Jikei University School of Medicine
キーワード:
微少重力
,
骨粗鬆症
,
カルシウム(Ca)
Keyword:
微少重力
,
骨粗鬆症
,
カルシウム(Ca)
pp.143-148
発行日 1997年2月10日
Published Date 1997/2/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1552108304
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はじめに
骨の廃用症候群とは,骨を使わないことによって生じる骨組織の萎縮や退行変性などを表す用語とされ,結果的に二次性の骨粗鬆症を来してしまう.では骨を使わないとはどういうことだろうか?骨組織は人類などの生体が重力に抗して体型保持と運動を行うのに必要不可欠な支持組織である.また骨組織はカルシウム(以下,Ca)やリン・マグネシウム(以下,Mg)などのミネラルの貯蔵庫として働き,生体の必要に応じてミネラルの貯蔵と放出を行い恒常性の維持に役立っている.このため,支持組織としての負荷が軽減されると,機能的な必要性が薄れ廃用症候群が生ずることとなる.
地球上では重力は1gravityの意味で1Gと表現されるのに対し,宇宙空間における無重力環境は実際にはきわめて0に近い力であるが,正確には完全に0ではない.物体にかかる重力(地球の万有引力)と地球の自転による遠心力が釣り合って,ほぼ0に近似した力の値を示すため,専門用語では「無重力」ではなく「微少重力(micro gravity)」と称される.この微少重力環境では重力負荷がほぼなくなるが,運動は可能であるいう条件で骨の廃用症候群が起こる.一方,長期臥床をはじめとする不動化は重力負荷は軽減されるものの消失するわけではなく,運動機能が極端に低下し,やはり廃用症候群が生じる.
本稿では宇宙空間滞在による骨組織および骨ミネラル代謝の変化を中心に,一部は長期臥床症例と比較対照して述べる.
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