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はじめに
2010年度診療報酬改定関係資料では,診療報酬算定における「廃用症候群の患者」は,「外科手術又は肺炎等の治療時の安静による廃用症候群の患者であって,治療開始時においてFIM(functional independence measure):115以下,BI(barthel index):85以下の状態等のもの」とされている.ADL(activities of daily living)の低下=廃用症候群と一概には言えないが,廃用に至るまでの経緯(病前の活動性も含め)を十分に検討する必要がある.
さて,廃用症候群の処方を受けると,臨床理学療法士の筆者としては「原疾患は何だろう?」と考える.廃用症候群とひと言でくくられても,その原因となる疾患は様々であるし,原疾患のコントロール状態や治療経過により理学療法の対応を柔軟に変えていくことを求められるからである.リハビリテーション施行患者の大多数は大なり小なり廃用症候群を伴っているであろうが,廃用症候群が第一診断名に掲げられるのはどのような場合だろうか.当院のリハビリテーション外来担当医師を対象にした廃用症候群の診断状況調査(2007~2008年)1)では,リハビリテーション施行患者全体の6~7%,年間約150患者が廃用症候群であり,圧倒的に内科的な急性増悪病態をきっかけとしているものが多かった(図1).
当院は,廃用予防(早期離床,早期リハビリテーション)の概念が比較的浸透している施設だと思われる.表1は廃用症候群の多種多様な症状を示したものであるが,これらを数多く併発する重篤な廃用症候群は当院ではほとんど見かけなくなった.八幡1)は,放置すればさらに悪化するであろうその初段階の廃用状態に対し,「初期廃用」という言葉を使っている.初期廃用の段階あるいは廃用予備軍の段階から,いかに安全に対処できるかが廃用症候群を抑制する最大の鍵だといえる.
廃用症候群には,「避けるべき廃用症候群」(必要以上に安静を強いられる)と,「避けられない廃用症候群」(安静にしていないと生命の危機がある)が存在すると仮定する.基本的廃用予防策(早期離床,早期リハビリテーション)が標準的に行われている施設では,理論的には「避けるべき廃用症候群」は減るだろう.そしてその結果,廃用全体における「避けられない廃用症候群」の比率が増える.そのような施設では,廃用症候群といえば「手ごわい」イメージかもしれない.
廃用症候群の理学療法は,原因疾患や処方時期,患者の状態などによって対応の仕方は一定しないと思われる.今回は主に急性期の「避けられない廃用症候群」に焦点を絞り,環境,ストレス,呼吸・循環,筋力低下,栄養に分けて理学療法の考え方,実際を,私見を交えながら紹介したい.
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