講座 廃用症候群・1【新連載】
廃用症候群の定義と病態
美津島 隆
1
Takashi Mizushima
1
1浜松医科大学附属病院リハビリテーション科
pp.620-625
発行日 2012年7月15日
Published Date 2012/7/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1551102342
- 有料閲覧
- 文献概要
- 1ページ目
- 参考文献
はじめに
リハビリテーション診療において,慢性疾患,手術後あるいは治療の合併症などで長期臥床を余儀なくされている患者の日常生活動作(activities of daily living:ADL)を自立させることは大変重要なテーマである.そのためには早期に身体の運動および生理学的機能を回復させることが不可欠で,リハビリテーションの目的の一つといっても過言ではない.
さて「動物」は文字通り「動く物」であり,ヒトは動くことにより全身の生体システムを調整し,その内部環境の恒常性を維持している.したがって,身体各器官が動かせない,または動かない状態が長期にわたると,当然のことながら様々な弊害が現れてくる.こうした身体不活動状態に起因した二次的に発生する障害を総称して「廃用症候群」と定義している.
ところで,この「廃用症候群」という語はHirschbergのdisuse syndromeの和訳であるが,日本では「廃用症候群」という語は特に医療の分野においては導入以来長く,一般的な概念である.しかし欧米ではこのような状態に対して不動化(immobilization),ディコンディショニング(deconditioning),不活動(inactivity)という単語を用いており,disuse syndromeという単語を当てることはほとんどない.
本稿ではこうした現状から,わが国で使用されている「廃用症候群」について,その概念と歴史的経緯,主な病態,臨床的な解釈についてまとめる.
Copyright © 2012, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.