報告
大腿骨頸部骨折患者における退院時機能の構造―ADLと移動機能とを区別した場合の影響因子の相違
対馬 栄輝
1
,
尾田 敦
2
1津軽保健生活協同組合健生病院
2弘前大学医療技術短期大学部
pp.417-421
発行日 1995年6月15日
Published Date 1995/6/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1551104314
- 有料閲覧
- 文献概要
- 1ページ目
Ⅰ.緒言
わが国における高齢化社会の進行は急速で,それによってもたらされる要介護老人(寝たきり老人)の増加は深刻な問題となりつつある.そして,要介護老人を生み出す原因として今日問題視されているのが,大腿骨頸部骨折(以下,頸部骨折)である.
そのため,近年,頸部骨折患者の機能予後に関する報告が多くなっている.現在までの頸部骨折に関する報告では,歩行などの移動機能の獲得を重視して述べたもの1-3)が多く,そのなかには移動機能を日常生活動作(以下,ADL)として扱っている報告4)もあるが,ADLを基準とした報告5-6)は少ない.ほとんどのADL評価表はその項目に「歩行」を含むことから,歩行とADLの関わりは深いと考えられる.しかし,果たしてADLと移動機能に単純な因果モデルが成立するか否かは確定できない.
そこで本稿では,頸部骨折患者の退院時ADLと移動機能の関連,ならびに,それぞれの決定要因の相違性について検討する.本研究の目的は,ADLと移動機能のどちらか一方で他方を予測することの可能性,またそれらを異なる次元として分けて評価する必要性などについて知見を得ることである.
Copyright © 1995, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.