報告
大腿骨近位部骨折受傷前に歩行の自立していた高齢者が退院後に歩行不可能となる要因は何か
対馬 栄輝
1
,
尾田 敦
1
Tsushima Eiki
1
1弘前大学医療技術短期大学部理学療法学科
pp.901-906
発行日 1997年12月15日
Published Date 1997/12/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1551104903
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緒言
高齢な大腿骨近位部骨折患者(以下,大腿骨骨折)の機能的予後には痴呆1-8),年齢,片麻痺1,4),理学療法への意欲5-7)の状態が大きく影響することが知られている.ここで,機能的予後とは何を指すのであろうか.その外的基準を「歩行」としたものもあり,また「日常生活活動(以下,ADL)」としたものもある.筆者らは,歩行とADLは本質的に構成概念が異なることを指摘した9).そのため外的基準の種類により,影響する要因が異なると考えた.
実際,筆者らの過去の報告では退院時ADLには主に理学療法への意欲や痴呆6)が,退院時歩行には主に下肢の運動機能8)が影響することを確認している.大腿骨骨折患者は退院後に期間を経て,身体機能が大きく変化する場合も多い.したがって,影響する要因は経時的に変化する可能性もある.しかし,退院後のADLに影響する要因7)を検討したところ,退院時ADLの影響因子6)とほぼ同様の結果が得られた.そこで,退院後の歩行機能に関してはどのような傾向を示すか,検討する余地があると考えた.大腿骨骨折患者の退院時歩行には痴呆よりも下肢の運動機能が影響するのであれば,退院後に下肢機能の改善で歩行機能が変化する者も少なくないと考えた.
以上から,本稿では受傷前に歩行が自立していた大腿骨骨折患者を対象に退院後の歩行状態を調査し,その変化に影響する要因を見いだすことを目的としている.
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