Japanese
English
- 有料閲覧
- Abstract 文献概要
- 1ページ目 Look Inside
Ⅰ.初めに
1868年DuchenneによりDuchenne型筋ジストロフィー(以下,DMDと略.)の臨床的,病理的所見が詳しく報告されて以来,約125年が経過し,それまでの間,基礎医学・臨床医学・リハビリテーション医学をはじめさまざまな分野から積極的なアプローチがなされてきた.特にKunkel,Hoffmanらによる1986年DMD遺伝子の発見1),1987年その関連蛋白質であるジストロフィンの発見2)は,現在超早期診断(胎児診断),筋疾患鑑別診断の確立や対症的治療法(薬物療法,筋芽細胞注入法),原因的治療法(遺伝子治療)の開発に大きな貢献を果たしている.まだ対症療法の域を脱しえないが,医療技術・知識の向上,医療機器の進歩,チームアプローチによる医療ケアの充実などにより確実に死亡年齢は延長3)され,20歳以上の生存者が多くなっている.
その一つの大きな要因としてリハビリテーションの普及が考えられる.DMD児に対するリハビリテーションの必要性については,本特集号で述べられる野島4),上田5),松家6)らの努力と熱意により,日本独自の体系化がなされ一つのコンセンサスが得られているように思われる.
そこで今回筆者は,初期段階つまりDMD児の歩行期におけるリハビリテーションについて当院の理学療法プログラムを紹介し,理学療法の考え方とその効果ならびに在宅児への対応など私見を含めて論じてみたい.なお,歩行期と言っても歩行不安定になってからの入院ケースが多いため(歩行児の平均入院時年齢は9.6±1.6歳),本論では歩行不安定ながらも歩行が日常生活の中に位置付けられている児を対象に述べさせていただく.また,この時期は装具療法(長下肢装具)との併用期でもあるが,本特集号で松家先生より論じられるので割愛させていただく.
Copyright © 1995, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.