Japanese
English
講座 行動科学・3
行動科学の進歩
Behavioral Sciences. 3: Advances in Behavioral Sciences
筒井 和義
1
,
坂田 省吾
1
Kazuyoshi TSUTSUI
1
,
Shogo SAKATA
1
1広島大学総合科学部人間行動科学研究講座
1Faculty of Integrated Arts and Sciences, Hiroshima University.
pp.613-620
発行日 1994年9月15日
Published Date 1994/9/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1551104085
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Ⅰ.行動を科学する
われわれヒトを含めた動物には共通して本能が有ると言われている.この本能に従って現れる個体レベルの反応が本能行動であり,本能行動は個体の維持や種属の保存に不可欠な行動として位置付けられる.また,ある種の動物では,本能のほかに学習したり記憶したりする能力が備わっている.最も進化した動物であるヒトには,さらに思考したり,創造するといったきわめて高度な能力さえある.これらすべての能力を生み出すのが脳の働きであり,行動を科学する上で脳研究はきわめて重要となる.
脳研究の歴史は古く,歴史上で「脳」という言葉で脳の記載がなされたのは紀元前にさかのぼる.時代の移り変わりとともに,さまざまな脳観が現れ,その多くが消えていった.有名な哲学者であり生物学者としても知られるAristotelesも,「脳という物体」が「血液を冷やす冷却器のようなもの」であるという誤った説を唱えた一人であった.確かな論拠無しに簡単に,説を唱える人はいないと思うが,脳の誤った理解の主な要因はその当時の貧弱な科学技術によるものと思われる.現在,科学技術の進歩と相まって,脳に関する知識は飛躍的に増大している.
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