特集 脳卒中片麻痺患者の体性感覚障害と理学療法
脳卒中片麻痺患者における上肢感覚障害と運動療法
高杉 潤
1
Jun Takasugi
1
1千葉県立保健医療大学健康科学部リハビリテーション学科理学療法学専攻
キーワード:
脳卒中
,
体性感覚障害
,
上肢
,
運動療法
,
ミラーセラピー
Keyword:
脳卒中
,
体性感覚障害
,
上肢
,
運動療法
,
ミラーセラピー
pp.817-823
発行日 2014年9月15日
Published Date 2014/9/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1551106750
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はじめに
近年,脳卒中後の上肢運動麻痺に対する運動療法では,Constraint-induced movement therapy(CI療法)や運動イメージを用いたメンタルプラクティス等の治療効果やエビデンスが示されている1).一方,脳卒中後の体性感覚障害に対する運動療法については,種々の方法が実施されているが,介入や結果に関する客観的なデータが少なくエビデンスも確立されていない2,3).これらの要因としては,運動麻痺が誰がみてもわかりやすい現象であり,治療の目的も運動や動作の改善に主眼が置かれる一方,体性感覚障害は視覚的にわかりにくく,検査においても患者自身の主観に依存するため,綿密な検査技術を要することが挙げられる.
体性感覚障害は脳卒中患者の60%以上でみられるが,リハビリテーションではしばしば見落とされている2)ことから,治療の対象が体性感覚障害に向けられにくく,セラピストの関心も運動障害に比べて低いといえる.しかしながら,体性感覚障害を伴うと運動麻痺の回復は低下し4),体性感覚障害が単独に存在しても深刻な運動障害が起こる5).体性感覚は運動機能に大きく影響を与えるため,われわれ理学療法士にとって決して無視できない項目といえる.
本稿では,脳卒中後の上肢の体性感覚障害に対する運動療法に限り,効果の示されたいくつかの事例について科学的根拠を交えて紹介する.
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