理学療法学科新入学生のための学生生活オリエンテーション
理学療法の施行と,その結果との間に有るもの
金尾 顕郎
1
1大阪市立大学医学部附属病院リハビリテーション室
pp.290-291
発行日 1991年4月15日
Published Date 1991/4/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1551103257
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私はこんな仕事がしたかった
常日頃“人間”というものに興味が有った.それは哲学的意味合いも無く,老人,子ども,同年代の行動・言動の違いがおもしろかったのである.そんな気持が有ったから私はこの道を選んだのかもしれない.
私が入学したのは,我が国の法律に理学療法士及び作業療法士法が公布され10年目を迎えようとしていた,今から16年も前のことである.その当時はあまりテレビ・ラジオで理学療法士の取り上げられているのをみたことが無く,開業医の叔父に勧められるまで理学療法士のことをまったく知らなかった.今でこそ主役の座にはほど遠いが,障害者を取り巻くドキュメントや有名人の闘病生活を取り上げたドラマなどに出てくるようだ.何はともあれ理学療法士とはどんな職種であるか情報収集のため,交通事故で入院した友人や外科手術を受けた親戚の者を見舞がてらその病院の訓練室をのぞきに行ったのである.そこで訓練を受けていた老人が「初めて一人で立てた」と喜ぶ顔に,にっこりと笑顔で応(こた)えている理学療法士の姿があった.それが私と理学療法との初めての出会いである.工学部を志望していた自分が,理学療法士という職種を満足に知らず,生涯を通じて行なうかもしれない仕事として選ぶにはあまりにも軽率すぎるかもしれないが,その何とも言えない光景が忘れられず,こんな仕事がしたいと思ったのはこのときである.
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