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Ⅰ.初めに
筋力改善のための運動療法は,基本的には徒手筋力テスト(MMT)の結果を基にして,1:自動介助運動,2:自動運動,3:抵抗運動などの訓練によって段階的に進められる.しかし実際には筋力低下だけで訓練方法は決められない.例えば,筋力は実際に有っても,術後筋再教育が必要なとき,あるいは疼痛が有って筋力が発揮できない場合などは,自動介助運動が用いられる.一方筋力を効率良く増強させるためには,筋収縮の種類に応じた訓練方法(等尺性運動,求心性運動,遠心性運動,等運動性運動など)を基にして,筋の長さ-張力の原理や,他の生体力学上の因子に加え筋収縮の速度,負荷量,収縮時間,頻度,そして筋疲労と休息など,さまざまな条件をつねに考えて訓練を行なうことがたいせつである.
一般に筋力は瞬発力と持久力とに分けられる.どちらを増大させるかは,DeLormeの原則がある.すなわち負荷を大きくして少ない運動回数は瞬発力を増大し,一方,負荷を小さくして多い運動回数は持久力を増大する,というものである1).しかし,両者は互いに密接に関係しており,並行して行なわれるのが実際であろう.訓練の目的をどちらに置くかは疾患の種類や障害の程度,また年齢などによって異なるが,特に過用性筋力低下を症状とする疾患には持久力増大が中心となる.この場合訓練も,全身の耐久性とも関連して頻回に行なうほうが良いと言われている2).一方筋力増強訓練の効果をあげるために,筆者らはその手段として,“筋が疲れるまで反復訓練する”ことを患者教育としてきた.その結果この方法は筋力,特に持久力増大に効果的であった.持久力訓練は日常生活動作としてのいわゆる力(power)の増大に直結しやすいという意味でも,より重要である.
さて,下肢の筋力増強訓練の場合,従来の臥位や座位での訓練に止まらず,荷重下でのいわゆる,closed kinetic chainを利用した動的訓練や,強化した筋肉を即座にしかも的確に反応できるようにするいわゆる神経・筋促通手技(PNF)を利用した訓練の重要性が井原・中山3)らが確立した動的関節制動訓練の目的の一つとして強調されている.
今回は,筋力と持久力の運動療法の方法と最近の知見について,整形外科的疾患の術後患者のプログラムの進めかたで整理し,併せて患者教育の立場からも述べる.
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