理学療法学科新入生への学生生活オリエンテーション
症例を通して学んだ幾つかのこと
長谷川 恵子
1
1筑波大学附属病院
pp.285
発行日 1989年4月15日
Published Date 1989/4/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1551102767
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野も山もすっかり春のよそおいとなり,新入学生の皆様は,期待と不安などに満ちた日々を過ごされておられることと思う.私も,昨年の今ごろは就職したてで,同じような心持ちだった.理学療法士として仕事を始めて約1年間に,多くの患者や周囲の人々とのかかわりがあった.“私がその中で得てきたことは,何だったのか”を,印象に残った幾つかの症例を通して述べてみたいと思う.
一つ目は,独歩可能な片麻痺患者(36歳)を担当したときのことである.この方は,私が就職してから担当した2人目の片麻痺患者だった.少なくとも,本の上の知識や実習で学んだ範囲においては,その治療が行なえるはずであった.しかし,私は,その患者にもっとも必要とされる治療を即座に実施できなかった.まるで,崖の上から突き落とされるような心境だった.
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