やぶにらみ医学評論
特に保健所に関する幾つかの問題について(その1)
奈良林 祥
1
1都立保健婦助産婦学院
pp.61
発行日 1960年1月10日
Published Date 1960/1/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1662202015
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保健婦はなぜ保健所医師に失望を感ずるか:—
もちろん,どの保健所医師も保健婦の失望を買つているなどと思つてもいないし,保健婦の尊敬を一身に集めているような立派な保健所医師のいることも否定しようとも思わない.ただ私が感ずるところでは,どうも保健所のお医者さんと保健婦さんは仲良くないというのが通り相場のようであり,そして仲良くない原因は,今のところ,保健婦が医師に失望するということからはじまつているように思われるのである.
保健所という仕事はいうまでもなく色々な職種のチーム・ワークによつてすすめられてゆくべきものであり,その中にあつては,医師もあくまで一部を担当するものでしかないわけなのだが,残念ながらどういうものか日本という国は,必要以上に,医者という名前だけでその職業に特別な権威を持たせる傾向があるようだ.そして,医者だからというだけで,本人まで先生と呼ばるべき存在だと思い込むような空気がとりわけ臨床の世界にはある.だから,マツク・ガーバンが指摘するように,保健所にあつて医師はほんの部分に過ぎない,犬捕獲人と同じ一つの歯車にすぎないといわれても,医者という名の権威が邪魔をして,仲々素直に同化出来ない点が残るように思う.それも,医師が保健婦に失望される一つの要素だろう.
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