入門講座 栄養と理学療法・3
栄養と理学療法
若林 秀隆
1
Hidetaka Wakabayashi
1
1横浜市立大学附属市民総合医療センターリハビリテーション科
pp.829-836
発行日 2012年9月15日
Published Date 2012/9/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1551102407
- 有料閲覧
- 文献概要
- 1ページ目
- 参考文献
はじめに
理学療法を行っている患者の栄養状態が良好で栄養管理が適切であれば,栄養を意識せずに理学療法だけで考えても大きな問題はない.しかし,理学療法の臨床現場では若年の運動器疾患患者を除くと,栄養障害を認める患者が少なくない.
施設別に低栄養の高齢者の割合を簡易栄養状態評価法(the mini-nutritional assessment:以下,MNA®)で調査したレビュー論文では,病院38.7%,リハビリテーション(以下,リハ)施設50.5%とリハ施設で最も低栄養の割合が高かった1).回復期リハ病棟でも入院患者の2~3割が低栄養で,1割は重度の栄養障害の可能性がある2).
低栄養の場合にリハの予後が悪いことも,廃用症候群3),脳卒中4),大腿骨頸部骨折5)などで指摘されている.また,栄養を考慮せずに機能改善をめざした筋力増強運動や持久力増強運動を行うと,筋力や持久力はむしろ低下することがある.
低栄養の患者の機能,ADL(activities of daily living),QOL(quality of life)を最大限高めるためには,栄養と理学療法を切り離して考えることはできない.本稿では,「栄養ケアなくしてリハなし」「リハにとって,栄養はバイタルサインである」ことを解説する.
Copyright © 2012, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.