臨床実習サブノート 基本動作の評価からプログラムを立案する・4
股関節手術後患者の基本動作の評価からプログラムを立案する
榎 勇人
1
Hayato Enoki
1
1高知大学医学部附属病院リハビリテーション部
pp.644-653
発行日 2012年7月15日
Published Date 2012/7/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1551102349
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はじめに
筆者が臨床で患者の基本動作を評価する際,特に歩行のような場合は,「体幹の動揺が大きいな」「速度が一定せずに歩行のリズムが悪いな」など,まず漠然と全体を見て,そこから細部を評価することが多い.一方,学生に患者の歩行を初めて評価してもらうと,「足関節の背屈が……」などと細部から答える学生が多いことを経験する.最後に答えに行き着きさえすればどちらから見てもよいと思うが,細部から見た場合,少なからず「木を見て森を見ず」になってしまうことがある.
つまりその細部の異常が,基本動作に悪影響を及ぼしている原因の一因子なのか,それとも逆に異常動作から影響を受けている結果なのか,全体におけるその細部の問題の位置付けを検討しなければ,治療介入すべき問題なのか判断もつかず,行き当たりばったりの治療となってしまう.
よって本稿では,股関節手術後患者の基本動作として,当院の股関節手術で最も多い人工股関節全置換術(total hip arthroplasty:THA)を行った症例の立位と歩行を中心に,生体力学(biomechanics)の視点などを取り入れ,「木」と「森」の関係を述べながらプログラムにつなげていきたいと思う.
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