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はじめに
平成22(2010)年8月6日の厚生労働省老健局長通知「地域支援事業の実施について」で,「特定高齢者施策」が廃止された.この施策は全国の市町村を悩ませ続け,筆者の知る限り自治体単位での成功事例が皆無であった.そのため「事業仕分け」で,必要性は認められながら費用対効果の悪さを指摘され,特定高齢者という言葉は消えることになった.同通知を一読する限りでは,名前を「二次予防対象者」と変えただけで基本的枠組みは変わっていないと受け止めている自治体職員は多いのではないかと思われる.
ところが,①把握に健診は必要ではなく,地域活動の参加者を対象者としてよい,②適応期間も一律3か月から市町村の判断,③複数プログラムの中から,市町村が効果ありと判断したものを組み合わせて実施するなど,市町村の裁量は大きくなっており,厚生労働省の県担当者会議でも,自治体の主体的取り組みが尊重されるとのことであった.したがって,自治体の決断があれば,後述する「いきいき百歳体操」の地域展開の手法などを活用し,本稿のテーマである「介護予防の地域づくり」に取り組みやすくなったと言える.自治体勤務や専門職として本事業に関わる機会の多い理学療法士が,本稿を参考に効果的な介護予防事業展開を目指すことを期待している.
筆者は20年以上保健所に勤務する医師であり,老人保健法の機能訓練事業にめぐり合い,市町村と一緒に地域リハビリテーションの活動に携わってきた.介護保険導入後,市町村の機能訓練事業も縮小される一方で,介護予防の必要性が説かれている.そこで,住民が主体の介護予防事業として出会ったのが高知市の「いきいき百歳体操」であり,その内容と地域展開手法について全国の市町村の求めに応じて指導・助言を行い,普及に努めている.
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