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高橋 今日は「老化による身体機能低下と理学療法」という特集テーマに関連して,高齢者に対する理学療法の現状と課題について,各病期の臨床現場の方々にお話しいただきます.急性期の現場からは東京大学医学部附属病院の横田さん,回復期からは小倉リハビリテーション病院の小泉さん,維持期(地域生活期)からはマイルドハート高円寺の種市さんにお越しいただきました.
現在,わが国は高齢社会に直面しています.平成21(2009)年版の「高齢社会白書」では,総人口1億2,769万人に占める高齢者の割合は22.1%,特に75歳以上のいわゆる後期高齢者は10.4%と報告されています.そして,2013年には,高齢者人口が25%に達すると予測されています.
それに伴って,高齢者に対して理学療法を実施する機会がこれまで以上に増えていくことになりますが,高齢者の場合は,老化による身体機能の低下が予後に大きく関わるということに注意が必要です.つまり,直接的に治療対象となる疾患や運動機能,ADL(activities of daily living)の改善だけに注目するのではなく,加齢による呼吸や循環,各種臓器,栄養状態,精神機能など,様々な身体機能の低下との相互連関を意識して,全身を管理しながら介入することが重要です.
今後,医療費・社会保障費抑制の観点から,急性期はより早期化し,回復期はより密度が高まり,退院後の維持期(地域生活期)が重視されていくなかで,われわれが高齢者の自宅を1人で訪問して理学療法を行う機会も増えていくと思います.そこで,身体機能を的確に把握して,効果的で安全な質の高い理学療法を行うことは,専門職としての使命でもあります.今日は,各病期での具体的な取り組みをご紹介いただきながら,われわれが医療・介護・保健の専門職として社会に認められていくためにも,どのような視点や具体策をもって高齢者に対する理学療法に取り組むべきかを考えていきたいと思います.
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