特集 パーキンソン病の理学療法最前線
―こんな時どうする―パーキンソン病の主要症状に対する理学療法―1.体幹機能障害
佐藤 房郎
1
Satou Fusao
1
1東北大学病院リハビリテーション部
pp.501-508
発行日 2009年6月15日
Published Date 2009/6/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1551101427
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はじめに
大脳基底核は,身体内部の欲求や変化に対する自動的な適応行動に関する運動制御を行っている1).興奮性と抑制性の神経回路を有するため,障害される部位によって寡動(パーキンソン病)と運動過多(ヘミバリスムス)といった相反症状を呈する2).また,ドパミンの働きで,皮質と線条体の間のシナプスが可塑的に変化することがわかっており,運動学習や認知的なスキルや習慣的行動の学習(強化学習)に関与している3).こうした大脳基底核の役割を反映して,パーキンソン病患者は歩行やリーチ活動など,自動運動や内発的な運動の開始が困難になる.また,歩行時の腕の振りや椅子から立ち上がる前の姿勢変換などの連合運動や準備姿勢(動作)も障害される.
パーキンソン病に対する根治的治療はいまだ確立されておらず,薬物療法と理学療法の併用が標準的治療法として認識されている.それらの治療法について,治療の限界や問題点も指摘されているが4),理学療法士には慢性進行性の経過をたどるパーキンソン病患者の機能維持を支援する責務がある.なかでも,体幹機能は,姿勢調節と基本動作において中心的な役割を担っている.とりわけ体幹の回旋運動は,動作の連続性や安定性の獲得に不可欠な要素といえる.本稿では,体幹機能に焦点を当てた機能評価と治療手技について概説する.
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