書評
―市橋則明(編)―「運動療法学―障害別アプローチの理論と実際」
伊橋 光二
1
1山形県立保健医療大学
pp.806
発行日 2008年9月15日
Published Date 2008/9/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1551101261
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運動療法は理学療法の柱であり,多くの養成施設において力を入れて教育している科目の1つである.運動療法をどのように教育するかは養成施設によって異なるが,運動療法の原理を十分に教育することが大事であると考えられる.運動療法の基本がしっかり身についていれば,どのような疾患を前にしても,その病態に応じて運動療法を適用していけばよいからである.つまり,学生が臨床実習で遭遇する可能性のあるすべての疾患について,その疾患別運動療法を教えようと思っても無理であり,重要なことは,運動療法を目の前の患者にどう応用するかということである.この視点が欠けると「この疾患の運動療法は教わっていません」といった学生の発言につながってしまうのではないだろうか.
そこで重要なことは,身体運動のメカニズムと,運動が身体に与える影響を運動療法の視点から,より深く理解することと考えられる.この観点から,市橋則明氏の編集による『運動療法学』は待望の1冊と言うことができる.本書は大きく2部に分かれており,前半の「運動療法の基礎知識」では,運動学を中心に,運動と呼吸,循環,代謝との関連,さらに運動と学習,発達,老化との関連が詳述されており,運動療法原理の科学的理解に好適な書である.特に,編者による「運動学の基礎知識」の項では,“凹凸の法則に従った関節可動域運動とその間違い”や“筋の作用は覚えるな”といった見出しが目を引き,興味深く読み進めることができる.
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