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はじめに
大学院(graduate school)とは,大学(短期大学を除く)を卒業した者,および大学(短期大学を除く)を卒業した者と同等以上の学力があると認められた者に対して,より高度な教育を行うための教育・研究組織のことである.大学院は,専門分野における学術の理論および応用を教授・研究し,その成果を広く社会に還元すると共に,高度で専門的な職業能力を有する人材を養成することを目的としている.そして,社会の高度化,複雑化が進むいま,大学院教育に求められているのは,自ら将来の課題を探求し,その課題に対して幅広い視野から柔軟かつ総合的な判断を下して解決できる能力の育成である.大学院の主たる目標が,研究者の養成,高度専門職業人の養成,あるいは,社会人の再教育のいずれにあろうと,上述の問題解決能力を養うことが求められている.
以上を踏まえ,大学院教育の目標として以下の4点が挙げられる.
①高度な専門的知識を有し,未知の分野を開拓しうる能力の育成
②幅広い基礎的知識と視野を有し,課題を総合的に理解し追求する能力の育成
③創造性豊かな個性を有し,主体的かつ柔軟に行動する能力の育成
④専門的知識を通じて国際的な交流のできる能力の育成
わが国では,1996(平成8)年4月に広島大学に理学療法に関する大学院が最初に設置されたのを契機として,2007年5月時点で,全国で29校の大学院が設置されている(修士課程11校,博士課程18校)1).しかし,現状では大学院における理学療法学教育に多くの問題があるのも事実で,将来をしっかりと見据えた展望を持つ必要性に強く迫られている.本稿では,こうした現状を踏まえ,まずわが国の大学院における理学療法学教育の現状を,神戸大学大学院医学系研究科保健学専攻の場合を例にとって述べ,理学療法系大学院の問題点と将来展望について言及してみたい.
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