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靴の歴史を紐解くと,紀元前2000年ごろのエジプトでは貴族はサンダルを履き,紀元前1000年には靴を履いていたと言われている.一方,日本では靴の歴史は浅く,弥生時代に農作業用の田下駄が履かれたとされたが,平安時代でも庶民は裸足だったと言われている.足を寒さや地面の凹凸から守り,歩きやすくするために靴は必要とされたが,日本で西洋スタイルの靴の生産体制ができたのは明治3年(1870年)のことである.人類が直立二足歩行を始めた進化の過程の中で,日本人に靴を履く習慣ができたのは,百数十年前のつい最近といえる.そのような中,靴と足の関係は注目されはじめ,近年では整形外科医,義肢装具士がインソール・足底板を用いて足のトラブルに対処するようになった.
現在インターネットでキーワードを「インソール」として検索すると,約893,000件がヒットし,「足底板」だと28,300件,「足底挿板」では550件が検索結果として表示される.その内容は主に商品の説明や病院,診療施設での治療効果の報告である.インソールという言葉は,商品名として使用されていることが多く,医学・治療的要素と商品の名前が混同して使われている.実際に医学の分野で使用される治療的な意味合いが強い言葉としては,インソールではなく足底板や足底挿板が用いられる.辞書にてインソールを引くと「靴の敷皮,足の汗を吸い取ったり,足裏を刺激して疲れを取ったりすることなどを目的として靴の中に敷く中底」と解説されている.足底板(インソール・shoe insole)のようにインソールと足底板が同義語で用いられている場合も多い.さらに専門書には,足底板の治療目的は,足部アーチの保持のため,また足部変形の予防・矯正,そして免荷のために用いられるとされている.現在の臨床の医学会では,インソール・足底板・足底挿板の明確な使い分け,線引きはなされていない.
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