入門講座 活動向上に生かす動作分析➍
頸椎症性脊髄症の症例における動作分析
坂本 親宣
1
,
濱岡 健
1
Sakamoto Chikanori
1
1神戸労災病院リハビリテーション科
pp.895-901
発行日 2003年10月1日
Published Date 2003/10/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1551100908
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頸椎症性脊髄症(cervical spondylotic myelopathy;CSM)は中年以降の比較的高齢者に多く発症する疾患である.潜在的に発症するために症状を自覚することが少なく,また疼痛を伴わない例が多いため,症状が進行してから受診する例が多い.多くの症例は「手指がしびれる」という上肢末梢の異常感覚が初発症状となる.だが病態の進行とともに感覚障害のみならず,運動障害や膀胱直腸障害なども加わり,全身的に多彩な症状を呈する疾患である.よって症状が軽度の段階では日常生活活動(activity of daily living;ADL)にさほど障害が出現しなくても,症状が重度になれば日常生活活動や日常生活関連動作に著しい障害を来したり,生活の質の低下を招いたりする可能性がある.
このように病態の進行度によって障害の程度にばらつきがあるため,社会復帰を目標としたリハビリテーションを行うにあたっては,機能向上を図るだけで社会復帰が可能になるのか,それとも環境設定も視野に入れなければならないのかを適切に判断しなければならない.そのためには個々の症例の1)起居動作,2)移乗動作,3)歩行,4)セルフケアなどの動作を詳しく観察,評価し,認められた障害が,どのような病態が原因となって出現しているかを分析するとともに,どの程度まで回復しうるかを予測して対処することが重要である.そこで本稿ではCSMの症例において起こりうるADL面での障害を,その症状や病態と関連付けながら論述する.
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