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リハビリテーション(以下,リハ)医療は,人的な面からはセラピストの確保困難,収益の面からは低い採算性,平均在院日数の面からはそれを延ばすものとして捉えられるなど困難な時代を経過してきた.これらには誤解があるにしても,リハ医療の多くは公的医療機関とリハ専門病院をはじめとした一部の民間病院だけが提供してきたのも事実である.しかし,平成以降の診療報酬改定により,民間医療機関のリハ医療への取り組みが次第に増加し,定数問題を抱える公的医療機関をしのぐ感があった.しかし,平成14年4月の改定によるセラピスト1人当たりの点数の増減に関しては日本理学療法士協会の調査では言語聴覚療法士(以下ST)では約65%の増であったが,理学療法士(以下PT)では約22%減,作業療法士(以下OT)では約10%の減となっている.また,平成14年4月現在,PTが勤務する医療機関数に対してOTとSTの勤務する医療機関数の比率は,それぞれ約60%,約20%,医療機関に勤務するPT数に対するOT,ST数の比率は,それぞれ約60%,約10%であり,言語聴覚療法の引き上げ率を加味しても,全体では約13%の減である.このような診療報酬上におけるリハ医療の評価が妥当であるか否かを,これからのリハ医療の方向性と結び付けて考えることが現実的であるが,今回の診療報酬改定の主因である「医療制度改革」の動向を鑑みながら思考する必要もある.そのうえで,これからのリハ医療のあり方に不可欠な部分については積極的な提言や具申を考慮しつつ,今回の改定を「危機」として捉えるだけではなく,「転機を好機へ」転ずる努力も不可欠である.
日本の保健医療制度
日本の保健医療を支えているのは医療および介護保険制度である.この医療保険制度の特徴は,国民皆保険,自由開業制,医療機関へのフリーアクセス,現物給付,出来高払い,1本化された診療報酬などであり,保険証1枚あれば,比較的安価に均一的な医療がどこででも受けることができる制度として世界的にも評価されてきた.米国のように医療へのアクセスが不十分であることは,医療システムにとって重大な欠点1)といえる.昭和36年(1961)に実現したこの医療保険制度は,高い経済成長を基盤に国民の健康水準の向上に寄与し,平成12年に施行された介護保険制度は,各市町村が保険者となり,65歳以上と40~64歳が加入し,要介護認定を受けた被保険者が介護サービスを現物給付される制度として要介護者に有用されてきた.しかし,医療保険制度においては,公平性・効率性・安定性,制度間や世代間での給付格差,高齢者の位置付け,被用者保険制度の保険者の枠組み,高齢被保険者の増加,小規模保険者の増加,保険料の地域格差など,また,介護保険制度においては,応益負担2),減免の3原則,保険料負担と罰則,利用料の負担感,不合理な要介護認定,老々介護の増加への対応,未利用者・非該当者,施設不足,サービスの上限設定と不足など多くの問題が指摘されてきた.
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