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障害受容という言葉は,臨床の場で治療者がしばしば使っている言葉であるが,臨床的に何をもって,「受容」とするのかが依然あいまいである.さらに治療者側が,その概念を明確に捉えて使用していないため,障害を有する側とのずれが生じてきた.近年,その概念や受容過程について,活発に論議されている.そういったことを踏まえ,「障害を受容する」ということについて言説する.
◎障害受容の概念について
まずGrayson1)は,障害受容を身体・心理・社会的側面から捉えることが重要であると指摘した.次にWright2)は価値転換説を唱え,障害受容において4つの価値転換を重視した.すなわち①価値の範囲を拡張すること,②身体的価値を従属させること,③障害に起因する様々な波及効果を抑制すること,④比較価値において自己を評価しないことである.上田3)は,障害の受容とはあきらめでも居直りでもなく,障害に対する価値観の転換であり,障害をもつことが自己の全体としての人間的価値を低下させるものではないことの認識と体得を通じて,恥の意識や劣等感を克服し,積極的な生活態度に転ずることであるとした.本田4)は,障害受容の概念には,①障害の認知,②回復の断念,③適応的な行動,④社会的な自覚,⑤価値観の変化を含んでいるとしている.そして身体的自覚と社会的自覚の2つの心理的変化が重要であると述べている.南雲5)は,自己受容(障害のために変化した身体的条件をこころから受け入れること)に偏った,あるいは陥った障害受容の概念を自己受容と社会受容(社会が障害者を受け入れること)にわけて捉え直す考え方の重要性を指摘している.相互作用論からみた社会受容という概念は,障害受容(自己受容)を援助する方向づけを示唆する.
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