報告
変形性股関節症患者はdual-task下での歩行時に体幹動揺が増大する
山田 実
1,2
,
平田 総一郎
3
,
小野 玲
3
Yamada Minoru
1,2
1坂田整形外科リハビリテーション
2神戸大学大学院医学系研究科
3神戸大学医学部保健学科
キーワード:
変形性股関節症
,
dual-task
,
注意
,
歩容異常
Keyword:
変形性股関節症
,
dual-task
,
注意
,
歩容異常
pp.933-937
発行日 2006年11月1日
Published Date 2006/11/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1551100686
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緒言
ヒトは膨大な量の情報の中で,様々なことを考え,または行いながら歩く.このような行動は,平素より当然のように無意識下で行われている.しかしながらこの行動には非常に複雑な機構が含まれており,中枢神経系,筋骨格系のあらゆる機能が関わっている.
中枢神経系では,前頭連合野(特に前頭前野)を中心としたワーキングメモリと呼ばれる機能がこれに関与している.ワーキングメモリとは課題遂行に必要な情報を必要な期間,能動的に保持する機構であり1,2),加齢や脳障害によりその機能が低下することが判明している3).さらにワーキングメモリが姿勢制御に果たす役割が示唆されており,姿勢とは無関係の課題(task)に注意を向けた際(dual-task:二重課題)の姿勢の動揺は,若年者よりも高齢者で大きく,さらに転倒未経験者よりも転倒経験者のほうが大きい4).一方,このワーキングメモリの容量には限界があるため,加齢や脳障害の影響を受けた者以外であっても,dual-taskを行わせた際にパフォーマンス能力が低下する可能性が高い.これには筋骨格系の機能低下が影響を及ぼすと考えられる.
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