とびら
たくましく生きる
西山 知佐
1
1名南ふれあい病院リハビリテーション科
pp.893
発行日 2006年11月1日
Published Date 2006/11/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1551100680
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マレーシアにあるセピロックリハビリテーションセンターへ行く機会を得た.ここは人間ではなくオランウータンのための施設で,乱獲にあったオランウータンたちを森へ帰すのだという.食事の時間が一番良く観察できると聞き,初めて見るオランウータンにワクワクしながら指定の場所へ向かった.
決まった時間になるとオランウータンはロープ伝いに木の上に設置された“食堂”へやってくる.飼育員が現れるとえさをもらい,おいしそうに食べる.彼らの仕草の一部始終を見ているとお茶目だ.特に母親が子供にえさを食べさせる様子は人間と同様に微笑ましい.ホッとしたのもつかの間,ふと下を見ると,多くのサルが身を潜めているではないか.飼育員がいなくなるとサルは一気に駆け上がって,オランウータンを追い出し,残ったえさを食べはじめる.その凄まじさに驚いたが,おそらくサルは試行錯誤の上,ここで生活するための知恵を編み出したのだろう.一方のオランウータンに対しては哀れに思ったが,自然の法則に私たちはどうすることもできない.これも生きていくためには必要なのだと改めて感じた.
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