特集 「腰痛症」の要因と理学療法
腰痛症者の理学療法評価の臨床的思考過程
伊藤 俊一
1
,
隈元 庸夫
1
,
白土 修
2
Ito Toshikazu
1
1北海道千歳リハビリテーション学院
2埼玉医科大学
pp.113-121
発行日 2007年2月15日
Published Date 2007/2/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1551100645
- 有料閲覧
- 文献概要
- 1ページ目
- 参考文献
はじめに
2004年の厚生労働省国民生活基礎調査1)によると,有訴者の症状は腰痛が男性で第1位,女性で第2位であり,通院者率では男女とも高血圧に次ぐ第2位であった.また,高齢化と共に腰痛を有する人が増加し,特に女性で顕著となっている2).これは加齢変化による腰椎変性疾患の多彩性のみならず,閉経後骨粗鬆症に伴う腰痛症者の増加も意味しており,急速な超高齢化社会の訪れに伴う重要な社会問題と捉えられている.
整形外科における腰痛症者に対する治療選択として,90%以上の対象でまず保存療法が選択され3),疼痛緩解を目的とした物理療法や腰痛体操を中心とした運動療法が幅広く行われている.しかし,腰痛症者に対する理学療法施行時に「とりあえず腰痛体操」といった安易なプログラムを指導していないだろうか.近年では,腰痛症治療のシステマティックレビュー4)も散見されるようになったが,いまだ運動療法の科学的根拠が明確化されておらず,その根拠を証明する取り組みも大規模には行われていない.さらに,「腰痛症」とは“腰が痛い”という症状の総称であって,その名前の病態があるわけではない上,85%の対象では非特異的疾患を疑う必要があるとの報告さえ多く存在する.このように複雑に絡まった病態を目の前にして,多くの時間を評価に費やしても結局は画一的なプログラム選択となることが少なくない.この結果,腰痛症者から理学療法,理学療法士は選ばれていない2,5).
本稿では,腰痛症に対する理学療法評価の一般的な項目とその解説に加え,問診・各種測定と動作観察などにおけるポイントを述べ,治療選択までの過程を概説する.
Copyright © 2007, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.