特集 「腰痛症」の要因と理学療法
腰痛症に対する運動療法と生活指導
川瀬 真史
1
Kawase Masafumi
1
1独立行政法人労働者健康福祉機構美唄労災病院/勤労者腰痛・脊損センターリハビリテーション科
pp.123-130
発行日 2007年2月15日
Published Date 2007/2/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1551100646
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はじめに
いわゆる腰痛症とは,外傷などの明らかな原因がなく,画像検査においても原因のはっきりしない腰痛症状を言う.腰痛症状には,何らかの原因があり,器質的疾患の初期,他疾患からの関連痛,不良姿勢などの機能的なもの,心因性のもの,などが考えられる.特に不良姿勢による腰痛は頻度が一番高いとされている.
腰痛症に対する運動療法の1つに治療体操がある.治療体操は腰痛体操とも言われ,主な目的は体幹筋の強化と軟部組織の伸張である.体操の代表的なものとして,屈曲運動を中心としたWilliams体操,伸展運動を中心としたMckenzie体操がある1).腰痛症の病態には,体幹筋の機能不全,筋の短縮,疼痛が存在し,対象者の症状に合わせた治療体操を病期別に選択することや,物理療法を補助として,疼痛をコントロールしながら継続的に行っていくことも大切である2~3).また,腰痛は日常生活と密接に関係しているため,運動療法と同様に日常生活指導も重要な治療手段である.日常生活指導は,正しい姿勢や動作を理解しやすい言葉で説明し,対象者の理解を深めることが重要であり,腰痛の予防・再発防止に有効である4).運動療法や生活指導は医療現場にとどまらず,家庭や職場などの生活の場でも,継続して行われるものであり,腰痛に対して対象者自身がいかにセルフケアを行っていくかが治療のキーポイントとなる.
本稿では,一般的に施行されている腰痛体操の選択と実際について解説し,あわせて具体的な指導について述べる.また,腰痛症者への教育的アプローチについての臨床データを含めて紹介し,日常生活指導についても言及する.
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