特集 高齢者の運動療法の効果と限界
高齢者の認知機能と運動療法
大谷 道明
1
,
岡村 仁
1
Otani Michiaki
1
1広島大学大学院保健学研究科精神機能制御科学研究室
pp.47-52
発行日 2007年1月15日
Published Date 2007/1/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1551100633
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はじめに
高齢化が急速に進む中,わが国の認知症高齢者の数は現在の約130万人から,30年後には300万人を超すと推測されている1).認知症は脳器質性疾患による症候群で,注意,記憶,思考,理解,判断,計算などの認知機能が低下していく状態であり2),精神症状や問題行動,日常生活活動レベルの低下など,社会的にも重大な問題として認識されている3).こうした状況の中で,認知症高齢者に対するリハビリテーションはいまだ試行錯誤の段階であり,その確立が急務といえる4).
なかでも理学療法においては,身体能力に対する運動療法を主体としているため,精神症状を有する認知症高齢者に対して特化したアプローチはいまだ皆無といえる5).しかし諸家の報告で6~12),身体活動は認知機能に影響を及ぼし,また運動トレーニングは直接的な神経生理学的刺激効果を有することが知られていることから,理学療法が認知症の中核症状である認知障害を,予防または改善する可能性があると考えられている.
本稿では,まず加齢による認知機能低下のメカニズムについて述べる.次いで,認知機能の維持・改善に対する運動療法に関するこれまでの報告をレビューし,最後に筆者らが構築した認知機能障害に対する運動システムの概要を紹介したい.
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