特集 高齢者の運動療法の効果と限界
高齢者の循環・代謝機能と運動療法
井澤 和大
1
,
笠原 酉介
2
,
渡辺 敏
1
,
岡 浩一朗
3
Izawa Kazuhiro
1
1聖マリアンナ医科大学病院リハビリテーション部
2聖マリアンナ医科大学横浜市西部病院リハビリテーション部
3早稲田大学スポーツ科学学術院
pp.35-45
発行日 2007年1月15日
Published Date 2007/1/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1551100632
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はじめに
高齢化社会を迎えた現代社会においては,多くの高齢者は何らかの合併症を呈する.また,肥満,インスリン抵抗性,高血圧,高脂血症などは,本邦における虚血性心疾患に代表される循環器疾患発症の主要因とされ,これらは相互に関連する1~3).
表1は,当院での2005年度(2004年4月~2005年3月)の循環器疾患患者における年齢,歩行距離,入院期間を示している.大動脈瘤・大動脈解離などの大血管疾患症例および心不全症例は,急性心筋梗塞症例や冠動脈バイパス術・弁置換術後などの心臓外科術後症例に比べ,平均年齢は高く,連続歩行到達距離は短く,入院期間は長期間にわたる傾向にある.また,当院での調査では循環器疾患患者の約30%以上に2型糖尿病に代表される代謝性疾患の合併を認め,その合併率も近年増加傾向にある1~3).
一方,老化や健康は,遺伝子的要因や栄養,環境そして運動といった外的刺激の影響を受けることから,同じ年齢であっても老化や健康の度合いには個人差が生じる4).また,食事療法および運動療法を用いた生活習慣の改善により,活力年齢が若年齢化するとの報告5)も散見される.高齢者の生活機能は,体力により規定される部分が大きいが,健康で自立した生活を送るには,体力の維持は欠かせない6,7).そのため“運動の習慣化”は身体活動量を高く維持するためにも重要と考えられる.
本稿では,高齢者の循環・代謝機能と運動療法について,(1)加齢による循環・代謝機能の変化,(2)運動療法の効果と限界,(3)運動の習慣化に対する行動科学的アプローチの3つの視点に大別し概説する.
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