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はじめに
加齢に伴い,インスリン作用が低下し,インスリン抵抗性が出現すると,糖・脂質代謝異常を招き,糖尿病,高血圧症,高脂血症および脳卒中,心筋梗塞などの動脈硬化性疾患に罹患する頻度が増大することはよく知られている.近年の家庭や職場におけるオートメーション(OA)化,コンピュータ化,車の普及などいわゆる文明化された日常生活においては,身体活動が減少(sedentary life)し,グルメ志向により欧風化された食生活(動物性高脂肪食,高蛋白食)と相まって,このような傾向をさらに強めている1).
事実,現在わが国では,高血圧患者は約3,300万人,糖尿病患者は約740万人(予備軍を合わせれば,1,620万人)と推定され,いずれも急激に増加している.
運動不足は筋肉におけるインスリン抵抗性を招き,糖・脂質代謝異常を来すが,加齢由来のインスリン抵抗性はこのような病態をより増悪させる.インスリン抵抗性は代償性高インスリン血症をもたらし,2型糖尿病,高血圧,高脂血症,動脈硬化を引き起こし,「シンドロームX」,「マルチプルリスクファクター症候群」,「死の四重奏」,「インスリン抵抗性症候群」,「内臓脂肪症候群」,「メタボリックシンドローム」などと呼称される病態を増加させている1).1996年に厚生省(当時)は,これらの病態は食生活,運動など生活習慣の歪みが大きく関係しているとして,従来の「成人病」に代えて「生活習慣病(life-style related diseases)」の概念を導入した2).
また,身体活動・運動や栄養・食生活など生活習慣の改善によって,糖尿病,循環器病(高血圧,冠動脈疾患,脳卒中)などの「生活習慣病」の発症予防や健康寿命の延伸を目指した「健康日本21」が2000年に策定された.その法的基盤整備として2002年には「健康増進法」が制定され,2003年5月に施行された3,4).2005年には「健康日本21」の中間評価が行われ,さらに,2006年7月には「健康づくりのための運動指針2006~生活習慣病予防のために」が公表された.
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