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米国医療政策研究局(AHCPR)は,心臓リハビリテーション(以下CR)を「医学的な評価,運動処方,冠危険因子の是正,教育およびカウンセリングからなる長期的で包括的なプログラム」と定義し,CRには運動療法のみならず,教育やカウンセリングなど多要素のアプローチが含まれることが報告されている1).このガイドラインでは,メタアナリシスの適用に至らなかった.しかし,運動療法がもたらす有益な効果としては,運動耐容能において最も明確であったと結論づけている.また心疾患における運動療法に関するガイドラインでは,運動療法の有用性について内外の文献からエビデンスに基づいた概説を行った2).その内容は,身体的効果や精神的効果(QOLの改善),および2次予防効果(リスクの是正)に分けてまとめられている(表1).特に運動療法は,CRの中心的な役割を担っており,様々な身体効果が証明されている.その効果には,運動耐容能や症状(狭心症発作の軽減など)の改善,最大下同一負荷強度での換気量,心拍数,心仕事量(二重積)の減少,骨格筋のミトコンドリアの増加,交感神経緊張の低下,冠動脈性事故発生率の減少などが報告されている(いずれもエビデンスのランクA:証拠が十分である).Cochrane Libraryによるsystematic reviewの結果,運動療法の効果として心臓リハビリテーションに参加した患者の生存率向上が報告されている3).メタアナリシスの結果によると,運動療法単独の場合は心血管死亡率が31%の減少(OR:0.69,95%CI:0.51-0.94),多要素心臓リハビリテーションの場合は26%の減少(OR:0.74,95%CI:0.57-0.96)を認めている.同様に無作為化比較対照試験(RCT)のreviewによると,心臓リハビリテーションの効果として,心血管死亡率が20~25%減少することが報告されている4,5).また,運動療法の介入による運動耐容能の改善,すなわち最高酸素摂取量は3~6か月のトレーニングにより,心筋梗塞患者で11~56%,冠動脈バイパス術患者で14~66%の改善が報告されている6).同様にOldridgeらによると,心筋梗塞後の運動療法における最高酸素摂取量の改善率は,20%前後と報告されている7).しかし,運動耐容能の改善の程度には運動療法の内容が大きく影響している可能性がある8).つまり,運動耐容能は,運動強度や運動時間,および運動日数,運動方法の違いによる影響が考えられるが,その詳細についての検討がなされていない.
一方,わが国で行われている循環器疾患における理学療法(誌面の都合で虚血性心疾患の運動療法に限定)には,①ウォームアップ,②持久性運動,③レクリエーションなどの追加運動,④クールダウン,⑤器械器具を用いたレジスタンストレーニングなどの構成内容になっている2).具体的な運動メニューには,ストレッチングなどの体操,歩行や走行,およびサイクリングなどの大きな筋群を使うリズミカルな動的運動,ボールゲームなどのレクリエーション運動,上肢・下肢・体幹の筋力増強トレーニングなどがあげられる.しかし,運動耐容能は運動メニューの違いによる影響が考えられるが,その詳細についての検討がなされていない.
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