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21世紀を迎え,われわれは理学療法士教育全体の視点からこれまでの教育内容を今一度見直し,科学技術の進歩と要請に合わせて,まずすべての理学療法士が履修すべき必須の学習内容や教授法を吟味・精選する必要性に迫られている.また社会から求められている患者とのコミュニケーション技術や安全性の確保などの学習内容を検討・付加することも急務である.さらに知識を詰め込むことを中心に行われてきたこれまでの教育内容から学生主体の学習方法に積極的に転換することも必要であろう.その意味で教育的側面から理学療法モデル,すなわち「理学療法教育モデル」を再考する意義は大きい.本稿では以上の点を踏まえ,まずわが国における「理学療法教育モデル」とは何かをその教育カリキュラム改訂の歴史的経緯から捉え,次いで理学療法教育理念・目的からみたわが国の「理学療法教育モデル」の実践の歴史を欧米との比較から考察すると共に,最近特に重要視される問題解決能力を育成する「教授実践モデル」の例をいくつか紹介した.また最後にその評価法の一つであるOSCE(objective structured clinical examination;客観的臨床能力試験)ついても言及した.
わが国の「理学療法教育モデル」に求められるものとは何か
近年の生命科学と科学技術など関連領域の著しい進歩によって医学の知識・技術は量・質共に膨大なものとなり,細分化されると同時に新たな視点に立った学問領域や診療分野も生まれつつある.特にわが国では急速な経済成長と科学技術の発展に伴って社会構造と人口動態は大きく様変わりし,また少子・高齢社会の急速な到来により疾病構造が大きく変化し,その結果,脳卒中や老人性痴呆といった高齢者特有の疾病が急増している.これに伴い,寝たきり老人などの対応が大きな社会的問題となってきている.さらに経済成長は国民の疾病・健康観にも大きな影響を及ぼし,健康の維持・増進はいまや国民一人一人の大きな関心事となっている.さらに国内外では様々な大規模災害が頻発しており,災害対策は社会的重要課題の一つとなり,中でも災害直後から長期にわたる総合医療システムの構築は特に重要であり,その一翼を担う高度な知識・技術を備えた保健医療専門職の育成は急務である.
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