特集 思春期の性問題
わが国における性教育の歴史的変遷
黒川 義和
1
Yoshikazu KUROKAWA
1
1大阪府科学教育センター
pp.161-165
発行日 1982年3月15日
Published Date 1982/3/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1401206488
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ひとくちに性教育といっても,家庭や学校における性教育のように対象と教育の場が明確なものと,公開講座や図書などを通じた不特定対象の一般的な啓蒙活動とがある.また内容的にも,未成年者に対する教育を目的とした狭義の性教育から,成人を対象にした性学(Sexology)の研究や伝達を含めた広義のものまで,いろいろの組み合わせがあるので,史的な観点からこれをどうまとめるかは大へん難しい課題である.そこで今回は紙面の関係もあるので,狭義の性教育に視点をあてながら,一部広義の内容も加えて,人間の性に対する受けとめ方が性教育の中でどのように変遷してきたかを考察することにする.
周知のように,人間の性には肯定的側面と否定的側面の両面がある.前者には性的欲求の充足と情緒の安定,男女間の愛の深化,家庭の構築と子孫の繁栄……など,人間存在にとって不可欠の要素が含まれている.これに対して後者には性非行,近親相姦,性倒錯,失恋自殺,三角関係のトラブル,性病及び以上を含めた性への溺耽から生じる自己崩壊……などがある.
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