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理学療法は,これまで医療機関における疾病や障害をその対象にしてきたため,医療における治療モデルとしての側面が主体であったが,医学の発達,疾病構造の変化,社会構造の変化,疾病・障害・健康に対する意識の向上などといった諸要因が相互に関連する昨今にあっては,QOLの概念を基底としてすべてのライフステージとライフスタイルにかかわる(介入する)理学療法モデルが求められている.個人によっては,人生という時間軸,生活社会という空間を規定する政治・経済・文化・環境といった諸要因もさることながら「価値意識」1)や「生活文化」2)までも視野に入れた理学療法モデルが必要とされているのである.したがって,現実的には「地域」,「ヘルスプロモーション」,「(介護)予防」,「エンパワーメント」,「行動医学」3),「障害学」4),「NBM(narrative based medicine)」5),「保健・医療システムの再構築」,「環境」などをキーワードとしたリハビリテーション(以下,リハ)領域の広がりとともに新たな理学療法モデルの構築が試みられている.
モデルとモデル化
現在,近代西洋医学(以下,近代医学),リハ領域において対極的な概念で用いられるモデル分類は多様である(表).それは,モデルが複雑な現象・事象を説明するために,特定の視点・側面からみた対象だけを概念的に単純化・簡略化して表現されるからである.したがって,モデルは,「現象を含む様々な変数の中から特定の諸変数だけを選び取り,複雑な現象を単純化して描いたものであるが,当面の関心の焦点である側面だけを選び取り,他の側面を捨象するため,その作り方は選択的であり,現象のどの側面に着目するかによって一通りではない」6)といった特性を有している.このようなモデルを表現形態から分類すると,現象を言語によって記述する言語モデル,現象を図式によって視覚的に説明する図式モデル,現象を数式で説明する数理モデルなどがあるが,理解という点からすれば図式モデルが多用されている.このようなモデル過程をモデル化(modeling)というが,モデル化によって「説明が容易になる」,「理解しやすい」という特色が生じる一方,同一の現象・事象に様々な異なったモデルが生成される可能性や異なった言葉で表現されることは避けられず,また,あまりにもモデルを精錬化すると,完成されたモデルが対象となる現象・事象から乖離する場合もある.
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