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1.反応時間の定義と構成要素
反応時間は,心理学において「ある与えられた刺激によって,決定される一つの意識的反応の最小の時間の遅れ」1)と定義されている.大脳を経由する反応の一つであり,刺激入力後,中枢である大脳皮質での刺激の認知,処理過程,行動の発現という一連の過程を総合した時間を意味している.Weiss2)やBotwinickら3)により,筋電図を用いた反応時間の測定方法が開発された.Weissは特に聴覚刺激を用いた単純反応時間で,刺激提示から筋電図発現までの潜時をpremotor time[前筋運動時間](以下PMT),筋電図発現から運動開始までの潜時をmotor time[筋運動時間](以下MT)とし,PMTとMTを加算してreaction time[反応時間](以下RT)として捉えた(図).PMTは,運動準備間隔,運動開始前緊張,運動パターン,肢位・姿勢,中枢覚醒,注意などの要因により影響を受けることが明らかにされており4),中枢過程の反映と仮定されている.また,MTは外部負荷量と筋張力発生率との関係で決まり,後者には運動単位の時間的,空間的参加という末梢の要因が含まれると考えられている5).
2.全身および選択反応時間
刺激提示後,跳躍台上で跳躍することにより,足が台から離れるまでの時間を全身反応時間という.脚を使って体重を移動させるような運動競技と反応時間の関連では,全身反応時間の有用性が高い.反応時間の差は神経系の機能の差ではなく,筋の収縮時間の差に由来しているといわれている.また,複数の刺激に対応した複数の応答があり,一つの刺激提示により応答を選択するものを選択反応時間という.刺激と反応選択肢の数が多くなると選択反応時間は延長することが知られている.
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