とびら
発想の転換
冨田 昌夫
1
1藤田保健衛生大学衛生学部
pp.1
発行日 2004年1月1日
Published Date 2004/1/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1551100399
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陸上や体操,水泳などスポーツの世界で日本選手の活躍が目覚ましい.特に大型といえない選手が活躍する姿は小気味良くなんとも爽快なものである.ウエイトトレーニング中心の体作りから,欧米的な常識にとらわれず,エネルギー消費の少ない,自然な動き方を工夫するようになったことが要因といわれている.自然体での無理のない動き方がメンタル面での安定まで引き出した成果だともいわれている.筋力や体力をつけることには限界があり,大きい人にかなわない.しかし自分の身体を感じて自分に合った動きを工夫することでハンディを跳ね返す力はいくらつけても終わりがない.小さな身体で勝てるようになったのは力で動くのではなく,自分の体に合った自然なやり方で,余分な力を入れずに,少ないエネルギーで動くという発想の転換の賜物である.
同じことは障害者にもあてはまるのではなかろうか.発症直後のショック期から脱出し,自分で動こうとする意図が出てくると,医療的に管理された肢位や体重に強制された受動的な固定による動きにくさのなかで,自分なりに身体を動かすための戦いが始まる.人本来の“バランスを崩しながら効率良く動く”ことができなくなり,いつでも身体の一部で動かないように“固定点をつくりながら強い力で動く”という無自覚とはいえ矛盾した過剰な安定性のなかで,筋緊張の亢進や動作の拙劣さは2次的に強められているものである.
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