特集 認知症へのアプローチ
認知症の病態と治療
鈴木 由貴
1
,
三村 將
2
Suzuki Yuki
1
1昭和大学附属烏山病院精神科
2昭和大学医学部精神医学教室
pp.507-512
発行日 2006年7月1日
Published Date 2006/7/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1551100345
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認知症とは
厚生労働省は2004年12月に「痴呆」を「認知症」という行政用語に変更することを決定し,これを受けて新聞やテレビなど報道関係でも痴呆のかわりに認知症という用語が定着してきている.学術用語としてはまだ完全に定着しているわけではなく,精神神経学会などではまだ呼称に関する議論が続いているが,当該領域に関する中核的な学会である日本老年精神医学会においては「痴呆」から「認知症」に呼称変更がなされている.
認知症とは,いったん正常に発達した認知機能および精神機能が,脳の器質的な病変によって後天的な衰退・崩壊を生じる病態である.臨床でよく用いられる診断基準の1つである国際疾病分類第10版ICD-101)では,以下のように定義されている.「認知症は脳疾患による症候群であり,通常は慢性あるいは進行性で,記憶,思考,見当識,理解,計算,学習能力,言語,判断を含む多数の高次皮質機能障害を示す.意識の混濁はない.認知障害は,通常,情動の統制,社会行動あるいは動機付けの低下を伴うが,場合によってはそれらが先行することもある.この症候群はアルツハイマー病,脳血管性疾患,そして一次性あるいは二次性に脳を障害するほかの病態で出現する」.認知症およびその類似の症状を引き起こす疾患には様々なものが知られているが,代表的なものを表1に示す2).
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