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はじめに
近年,医学教育を中心として,臨床技能を評価する方法として客観的臨床能力試験(objective structured clinical examination;以下,OSCE)が導入されている.OSCEは1975年にHardenらが提唱したものであり,教育目標上,精神運動領域および情意領域の学習効果を評価するのに適していると言われている1~4).わが国では,1992年に津田らが川崎医科大学で導入して以降,徐々に全国の医学部・医科大学に広がった3,5).理学療法士養成の教育課程では,卒業時の到達目標を日本理学療法士協会が示す「基本的理学療法を独立して実践できるレベル」に設定しているところが多く,医学教育に比べて在学時に一定以上の技能を習得することを求めている.しかし,理学療法士養成の教育基盤において必須の教育内容(知識・技術・態度)を基礎医学から臨床医学まで一貫してまとめたコア・カリキュラムというものは確立されておらず,多くの養成校は学内実習および臨床実習に多くの時間を割き,限られた時間内でより効率的な教育効果を上げるための教育システムを模索している.本来であればコア・カリキュラムの策定など多くの解決すべき問題はあるが,臨床技能の到達度を客観的に評価する指標を確立することと併せて,効果的な教育方略,すなわち教員側が提供した枠組みの中で学生が問題解決に携わる「自己主導型学習(self-directed learning)」の環境を整えていくことが急務である.
当学院では平成13年4月の開校以後,これまで慣例的にカリキュラム内に位置づけていた学外実習(評価実習,地域理学療法学実習,総合臨床実習)に加えて,できるだけ早期の臨床体験を通して,学生の現状能力を客観的に認識させ,積極的に科目へ取り組むような行動変容を促すことを目的に,学内カリキュラムの見直しを重ねてきた.そして授業の一環で実施する学外実習および医療機関以外の施設における授業の一環に位置づけていた学外実習(検査・測定実習,物理療法学実習)を教育課程の中に位置づけてきた(表1).本稿では,当学院の学外実習の1つである物理療法学実習前に,基本的態度,リスク管理,物理療法の臨床技能を客観的に判定する目的で「物理療法におけるOSCE」を実施し,その結果6)を通じて理学療法学教育におけるOSCEの応用および課題について述べる.
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